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研修医レポート
京都大学医学部附属病院

一人前の医師になるために日々研鑽を積む研修医の日常をレポートします。

初期研修医 S.Iさん
2008年度 河合塾名駅校 大学受験科 出身
ONE WEX国公立大医進コース

研修医から見た研修医

さまざまな診療科を1~数カ月ごとに回っていくので、医師免許を持った派遣労働者に近い面があります。新しい科での働きはじめは誰でもできる雑用くらいしかできませんので、特にそう思います。医学生と大して変化はないので当然です。

また、少なくとも最初の1年間は自分の希望する診療科以外もローテーションしなければならず、定められた症例レポート約30本を提出することが義務付けられているので、ある意味、医学部5・6年の臨床実習と同じような勉強もしつつ働きます。

かつて、研修医の過労死が問題となった時期に、「研修医は労働者か否か」が問われていたのも納得できます。現在は一般に「労働者である」と認められ、長時間の超過勤務も存在するという前提で、私の病院では他業界の新入社員より少し多めの給与がいただけている様子です。一部地方では破格の給与を出している病院もあるそうです。

大学病院内科研修医が過ごす1日

朝は定時の8:30出勤が一般的です。かつては6:00に出勤し、すべての入院患者の採血を行うなど、研修医になんでもさせてしまう習慣もあったそうですが、現在はありません。
夜間のイベントを電子カルテで確認して、朝の診察に向かいます。

私がローテした内科は糖尿病と免疫だったためで、比較的、慢性期の患者さんが多く、病棟の採血時間が遅かったので、昼過ぎに検査結果が出そろい、朝の診察所見とあわせて、次の治療戦略を考えながらカルテを書いていきます。

新しい科に来て1カ月くらいたつと、上級医が次に何をするのかを予測しながら、戦略を練るようになります。基本的には治療の最終決断は上級医の仕事ですので、患者さんの問題点を共有しながら、上級医の指示で動きます。順調なら、昼過ぎに立てた次のプラン(たとえば明日の採血内容、投薬量の調節など)を電子カルテ上でオーダーしたり、看護師さんに内容をお伝えしたりして、書類仕事以外は17:00までに終えられることがほとんどです。

書類仕事というのは、退院する患者さんの場合は退院サマリー記載と診療情報提供書記載、翌日がカンファレンスの場合は提示する症例の資料作りなど、日々のカルテ記載とは別件の記録業務や、院内・外含めての発表準備などがあります。

平均的な帰宅時間は19:00-20:00です。これらに加えて、おおよそ週1回の診療科当直があります。上級医と一緒に病院で宿泊し、適宜、指示を仰ぎながら看護師さんからの処方依頼や転倒した患者さんの診察、救急外来を受診したかかりつけの患者さんの診察などを行います。

ただ、患者さんの急変があると、そちらの対応に追われて他の仕事が進まなくなり、遅い時間に締切を過ぎて検査オーダーすることになり、検査に係る準備をすべて自分でしなければならなくなったり、検体や患者さんの搬送も研修医がしなければならなかったりと、雪だるま式に仕事が増えていきます。急変時は学ぶことも非常に多いのですが、患者さんは一番辛く、医療従事者も疲弊します。また、異なる上級医と何人も患者さんを受け持っていると緊急時の指示を仰ぐときに探す手間がかかります。

このように、不測の事態が起こったときに、まず最初に行動するのは研修医(と担当の看護師さん)です。もちろん、上級医も次の手立てを緊急に考えなければならないので大変です。

最近の心構え

卒業時にある教授がおっしゃられた「同業者のレベルを見抜くのも医者の技量である」の意味を、研修医の今、身をもって実感します。

何人もの上級医の下で動いていると、個々の医師のレベルの差をまざまざと見せつけられます。有能な上級医は安心感がありますし、経験年数の差から来ているのかもしれませんが、起こりうる事態を予測し、次の一手が明確になっていることが多いです。

現時点では責任を伴う決断はほぼ上級医に頼りきっていますが、いつかは上級医の立場になると考えると、できるだけ有能な医師になりたいと願います。そのためには、勉強しておくことがとても重要だと感じる日々です。知識がなければ、異常なものを異常と言うことすら、正常の経過を正常と言うことすらできないことに気づきます。

十分によい診療を行っていくためには、たとえば、テストに追われてする勉強、研修の要件を満たすだけの勉強ではなくて、興味を持って自ら進んで知識を集めていけるような診療科で自己研鑽を積んでいくことが重要ではないでしょうか。それが患者さんにとっても医師にとっても一番幸せなあり方なのかな、と考えています。

オン・オフをどのように切り替えているの? そもそも研修医にはオン・オフの区別がないもの?

他病院同年代の研修医と話していると、オン・オフの切り替えは、病院や診療科の方針によるところが非常に大きいと感じます。

幸い、私が研修中の大学病院は比較的、働きやすい環境が整備されていると感じます。各診療科ごとに夜間・休日は、当直の上級医1人とその下に研修医1人が常駐しており、勤務時間外の入院・急変対応、時間外処方、指示追加などは彼らの業務となることがほとんどでした。

ですので、オフの時間に出勤する義務はありません。もちろん、患者さんが心配だから診に来ている、ということはありますが、研修医の良心に委ねられている科が多いです。実際、1年目は看取りに関わる急変以外は、オフの時間に呼び出されたことはありませんでした。

当直でない日で、患者さんの病態が安定しているとき、オフの時間を存分に休みとして利用することができます。平日の業務が連日遅くまでかかることも多々あり、疲れて寝ていることもしばしばですし、学会発表が控えているとそちらの準備をすることもありますが、大学時代の友人と温泉に行ったり、上級医に飲みに連れて行ってもらったり、1~2泊の旅行に行くことも可能です。よく遊んでいる人は毎週末、旅行に出て、お土産を研修医室に置いてくれていたりします。

これから医学部医学科をめざす高校生・受験生へのメッセージ

なんとなく周りに流されて医学科に進学したという人がびっくりする程多いです。時勢が助長している面もあります。医者になれば経済的にゆとりのある生活を送れる面もあります。そういったことも0ではないですが、私はトップクラスの頭脳が集まる場で学問や興味を突き詰めること、そして、それらを踏まえて役に立つ仕事を見据えられることを医学科志望の理由としました。

"医師"を理解するにつれ、人の死をも簡単にもたらす職種である一方、ほかでは手の届かない領域に足を踏み入れられる機会をふんだんにもつ職種であると気がつきます。最初、パッと見は役に立たなさそうな、おそらく面白くないことをたくさん学びます。これは受験勉強も同じでしょう。でも、意外な部分が繋がる瞬間が、ふとひらめくときがあります。

将来、この一見つまらないフィールドで、最高にワクワクすることを創るマインドをもって、共におもしろい仕事ができる日を待ち望んでいます。

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