医学部入試情報2023
医学部入試結果分析2022
全体/国公立大学 全体概況
※医学部入試情報2023は、2023年4月入学予定者向けの情報です。
2022/06/28 掲載
2022年度医学部医学科入試の結果についてお伝えします。
医学部医学科入試 全体概況
2022年度入試の志願者数は、国公立大、私立大とも前年から大きな変化はなかった。とくに国公立大では2年目を迎えた大学入学共通テストの平均点が大幅にダウンしたものの、出願を断念する動きはみられず、縮小する後期日程では倍率が上昇した。強気の出願を後押ししたのは、近年進む入試の競争緩和である。加えて新型コロナウイルス感染症による将来の見通しへの不安が医学科の根強い人気を支えた。
では、2022年度医学科入試について詳しくみていこう。
志願者数は前期・後期日程とも微増
はじめに国公立大医学科の入学定員・募集人員についてみていく<図表1>。医学科の入学定員には期限付きの臨時定員が含まれるが、近年は2019年度の定員を超えない範囲での臨時定員維持が認められており、大きな変動はない。一方、選抜区分・日程ごとの募集人員は変化している。<図表1>のグラフは2018年度の募集人員を100としたときの各選抜区分・日程の変化をみたものである。前期日程にはほとんど変化がない一方で、後期日程の2022年度の募集人員は2018年度の7割以下まで大きく減少していることがわかる。
代わりに増加しているのは学校推薦型・総合型選抜である。なお、これらの選抜で増加しているのは、大学卒業後に特定の地域や診療科で医師として働くことが条件となっている「地域枠」の募集人員が主である。
<図表1>国公立大医学科 入学定員・募集人員の推移
年度 | 1年次入学定員 (増減) |
募集人員の内訳(増減) | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
前期日程 | 後期日程 | 学校推薦型 | 総合型 | |||||||
2022 | 5,505 | (-4) | 3,607 | (+10) | 363 | (-45) | 1,239 | (+6) | 248 | (+20) |
2021 | 5,509 | (+13) | 3,597 | (+16) | 408 | (-46) | 1,233 | (+21) | 228 | (+15) |
2020 | 5,496 | (-62) | 3,581 | (-54) | 454 | (-70) | 1,212 | (+58) | 213 | (-1) |
2019 | 5,558 | (±0) | 3,635 | (-33) | 524 | (-15) | 1,154 | (+23) | 214 | (+10) |
2018 | 5,558 | (-13) | 3,668 | (-18) | 539 | (-2) | 1,131 | (-5) | 204 | (+11) |
- ※河合塾調べ
- ※各年度の1年次入学定員には、「一括入試」など医学部入学者のみを選抜する募集枠以外からの進学者を含む

では、こうした背景を確認した上で、一般選抜の状況をみていく。<図表2> の表は直近3年分の入試結果である。今春は大学入学共通テスト(以降、共通テスト)の難化から医学科への出願を断念する動きが広がることが懸念されたが、志願者数は前期・後期日程とも前年比102%と微増、後期日程では実施大学の減少から倍率(「倍率」は志願者÷合格者、以降も同様に算出)は14.9倍から17.0倍に上昇した。
<図表2>国公立大医学科 一般選抜の入試結果推移
日程 | 志願者数(A) | 合格者数(B) | 倍率(A/B) | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
20年 | 21年 | 22年 | 21/20 | 22/21 | 20年 | 21年 | 22年 | 21/20 | 22/21 | 20年 | 21年 | 22年 | |
前期日程 | 14,741 | 14,773 | 15,087 | 100% | 102% | 3,721 | 3,765 | 3,809 | 101% | 101% | 4.0 | 3.9 | 4.0 |
後期日程 | 7,404 | 7,110 | 7,255 | 96% | 102% | 529 | 477 | 428 | 90% | 90% | 14.0 | 14.9 | 17.0 |
- ※河合塾調べ(5月24日現在)
- ※倍率は志願者÷合格者
<図表2>のグラフは、過去10年間の志願者数、倍率の推移をみたものである。前期日程では、2014年度以降2020年度まで志願者減少が続き、倍率も徐々に緩和してきた。18歳人口が減少しており、医学科でもその影響を受けている。その後は、志願者は1万5千人前後で推移、倍率もこの3年は約4倍で推移している。新型コロナウイルス感染症による将来の見通しへの不安から、2021年度以降資格に直結する学部系統の人気が高まっており、医学科では志願者減に歯止めがかかった形だ。ただし、⾧期的視点に立てば、競争緩和が進んでいる。
後期日程については、後期日程の廃止・縮小により2022年度の志願者は10年前の6割程度となっている。後期日程でも競争緩和が進んできたが、2021・22年度は倍率が上昇した。募集人員の縮小にも臆せず、積極的に出願する医学科志望者の強気の姿勢をうかがわせる。
大学別の入試結果
次に、大学別の入試結果をみていく。国公立大の志願動向は、前年の志願者数増減や、入試科目・配点、2段階選抜の新規実施・倍率変更などの入試変更の影響を受けやすい。とくに医学科では、こうした影響による志願者数の変動が顕著であり、2022年度も同様であった。
具体的な例を見ていこう。前期日程全体の志願者数は、前年から微増となったが、大学別にみると49大学中26大学で志願者が減少した。その多くが前年の志願者増加大で、とくに福島県立医科大、横浜市立大、信州大、徳島大、宮崎大などでは今春の志願者が前年から大きく減少した。これらの大学は志願者の増減を繰り返す隔年現象を起こしている。来春は志願者増の年にあたるため、出願の際には注意したい。
宮崎大では2次に理科2科目が追加された。前述のとおり志願者は減少したが、医学科では同様の科目設定の大学が多いため、志願者減の主要因にはならなかっただろう。岡山大では配点を変更し、2次重視型となった。共通テストの難化を背景に、他地区からの出願が大幅に増え、志願者は前年の1.5倍となった。
富山大では後期日程を廃止し、前期日程の募集人員が10名増加した。志願者は前年並みだったため倍率は3.0倍にダウンした。北陸地区では、金沢大も倍率が3倍を切ったが、福井大は志願者が2倍近く増加し、倍率も6.7倍に上昇した。来春は逆の動きに注意が必要だろう。
2段階選抜では、新規実施や倍率変更により狭き門となる大学は、受験生から敬遠される傾向にある。また、今春は共通テストの平均点ダウンが、あらかじめ決められた点数で第1段階選抜を実施する大学に影響を及ぼした。名古屋大では、2020年度に廃止した前期日程の2段階選抜を復活、「共通テスト700/900点以上」を基準とした。第1段階選抜を新規に実施したことに加え、基準点が高かったため、志願者は前年比43%と大きく減少、倍率は1.6倍となった。ただし、出願者の成績層を確認すると、減少したのは基準点以下の成績層であり、ボーダーラインのダウン幅も共通テストの平均点ダウンを加味した程度にとどまる。このほか第1段階選抜を決められた点数で実施した横浜市立大、大阪公立大も志願者の減少率が高かった。とくに大阪公立大は倍率が2倍を切ったため、来春は志願者の増加に注意が必要である。
後期日程では、17大学中10大学で志願者が増加した。後期日程縮小、共通テストの平均点ダウンにも関わらず、受験生は後期日程にも積極的に出願した。ただし、前期日程以上に激しく前年の反動が出た。旭川医科大、山形大では前年の約2倍の志願者が集まった一方、岐阜大、浜松医科大は前年志願者の半数以下となった。岐阜大は募集人員が25→10名に減員されたことも要因である。来春出願を検討する際には、前年の志願者数、倍率のみで判断しないようにしたい。
国公立大医学科合格に必要な学力
次に、国公立大医学科の入試難易度についてみていく。今春は共通テストの平均点ダウンにより、医学科でもボーダーラインが前年からダウンしている。<図表3>は、医学科(前期日程)の昨今のボーダー得点率(合格率50%と推定するライン)の変化をみたものである。
2021年度は、ほとんどの大学のボーダーラインが得点率80%以上に位置していた、2022年度は大きく左にスライドし、得点率75~76%がボリュームゾーンになっている。平均して6%ほどダウンした。これはもちろん医学科の易化を示すものではなく、共通テスト平均点ダウンを反映したもので、来春の共通テストの難易度によって再び大きく変動する可能性はある。医学科のボーダー得点率も共通テストの平均点の変動により大きく変わることは頭に入れておきたい。
<図表3>共通テスト難化による医学科のボーダー得点率の変化(2021→2022年度)

- ※前期日程で集計
- ※ボーダー得点率は合格率50%と推定するライン
2次力についても確認しておく。<図表4>は、国公立大医学科受験者の平均偏差値を、合格者・不合格者で切り分けてみたものである。グラフの外側の濃いチャートが合格者、内側の薄いチャートが不合格者の平均偏差値を示す。合格者の平均偏差値をみると、総合(英・数・理から2~3教科)では67.4となっている。科目別にみても国語を除き65以上となっており、高い2次力が求められていることがわかる。また、合格者と不合格者で比べると、5~9ポイントの差が生じている。とくに数学、理科で差が開いており、ここで差がついた様子がうかがえる。とくに理科は、国公立大医学科の多くが2科目を課すため、2科目めをいかに仕上げられるかが合格の鍵となりそうだ。
<図表4>国公立大医学科受験者の全統模試における総合成績・各教科の平均偏差値

- ※河合塾「入試結果調査データ」より
- ※平均偏差値は全統記述模試(第2回・第3回)の成績から算出
2023年度入試のトピックス
最後に来春入試の変更点を確認していこう。まず、入学定員についてだが、冒頭で述べたとおり医学科の入学定員の一部は期限付き臨時定員で、2019年度以降暫定的に延⾧が認められてきた。2023年度についても延⾧が認められ、全体としては入学定員に大きな変動はない見込みだ。なお、現時点では臨時定員の継続が正式に決まっていないため、一旦、返還を前提とした募集人員を公表している大学もみられる。各大学の入学定員が正式に決定するのは秋の予定だ。定員については、秋に最終確認したい。
このほか、各大学の入試変更点は『医学部入試変更点』を参照してほしい。来春は、岐阜大が後期日程を廃止する。これで後期日程実施大は16大学となる。近隣の大学では志願者が集中することも想定される。
名古屋大では前期日程に地域枠が設定される。これにともない後期日程の地域枠は一般枠に変更となる。旧帝大医学科で後期日程を実施しているのは名古屋大のみであり、一般枠になることで志願者の増加が予想される。
広島大(前期)では新たに英数重視型が導入される。これまでも募集人員の半分を2次の特定科目の配点が高いパターンで選抜してきたが、英語、数学の配点が高いパターンが加わる。また第1段階選抜の倍率を7倍から5倍に変更する。
各大学の選抜方法は7月末までに公表される「入学者選抜要項」で明らかになる。なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況により、来春も面接の中止など選抜方法の変更等が生じる可能性がある。志望校の入試変更には秋以降も注意を払いたい。
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